【図説】積立投資による時間分散(ドルコスト平均法)の効果を検証

FP

投資のリスク軽減方法の一つとして「時間分散」があります。ドルコスト平均法とも呼ばれています。

積立投資により実現されるこの手法に対して、株価がどのような動きのときにどのような損益が生じるのでしょうか。この記事では実際にシミュレーションを通じて積立投資による時間分散効果についての損益を図説します。どういった場面で利益が上がりやすか理解できると思いますので、参考にしていただければと思います。

なお、単純な値動きに対する一括購入の場合とつみたてによる違いは以下の記事で解説しています。

今回は上の記事とは少し違った視点で、つみたてによる効果と運用の損益について見ていきたいと思います。

時間分散「つみたて」による効果

このシミュレーションでは、最初の株価を1株100円程度とし、プラスマイナス20円以内の変動後に最後に最初の株価に戻る動きを想定し、その値動きの中で毎月1万円ずつ3年間積立をします。つまり、投資金額は合計で36万円となり、一括で購入して最後に一括で売却した場合は損益は0になります。

今回、4パターンの値動きを想定し、積立の効果によって最終的にどのような損益が生じるのか、また、つみたて期間中はどのような損益が生じているのかについて考察します。

値動きパターン1:上下

下図のように、上がった後に下がり、最後にまた戻るサインカーブのような値動きの場合を想定します。

36回のそれぞれの購入時の株価とそれに応じた購入株数などをまとめると以下の表になります。

購入
回数
株価10,000円で
買える株数
投資額評価額損益
1100.0100.010,00010,0000
2101.898.320,00020,178178
3103.596.630,00030,520520
4105.195.140,00040,995995
5106.693.850,00051,5601,560
6107.892.860,00062,1592,159
7108.891.970,00072,7292,729
8109.591.380,00083,2033,203
9109.991.090,00093,5103,510
10110.090.9100,000103,5853,585
11109.891.1110,000113,3673,367
12109.291.6120,000122,8062,806
13108.492.3130,000131,8641,864
14107.393.2140,000140,519519
15105.994.4150,000148,767▲ 1,233
16104.495.8160,000156,622▲ 3,378
17102.797.3170,000164,119▲ 5,881
18101.099.0180,000171,313▲ 8,687
1999.2100.8190,000178,281▲ 11,719
2097.4102.6200,000185,115▲ 14,885
2195.8104.4210,000191,923▲ 18,077
2294.2106.1220,000198,828▲ 21,172
2392.9107.7230,000205,959▲ 24,041
2491.7109.0240,000213,451▲ 26,549
2590.9110.1250,000221,435▲ 28,565
2690.3110.8260,000230,036▲ 29,964
2790.0111.1270,000239,365▲ 30,635
2890.1111.0280,000249,513▲ 30,487
2990.4110.6290,000260,545▲ 29,455
3091.1109.7300,000272,499▲ 27,501
3192.1108.6310,000285,375▲ 24,625
3293.3107.2320,000299,140▲ 20,860
3394.7105.6330,000313,721▲ 16,279
3496.3103.8340,000329,010▲ 10,990
3598.0102.0350,000344,867▲ 5,133
3699.8100.2360,000361,1191,119
最終値100.0360,000361,7761,776

最初の上昇局面では利益が出ていますが、その後ピークを過ぎて少し落ちると損失が生じはじめています。なんとか最後は利益がプラスになっていますが、投資額36万円に対して約0.5%です。計算時の四捨五入などの誤差もあるため、最後のプラスはほどんどないものと考えて良いでしょう。

積立時の損益を値動きのグラフに反映させると以下の図のようになります。

積立期間において運用状況がプラスの期間よりもマイナスの方が長いので、実際のところ、投資している人の気持ち的にはつらいでしょう。下がり続ける局面で、元の株価まで戻ると信じて耐え続けるメンタルが大事になるところだと思います。

一般に言われている「積立は株価が下がっているときこそ、多くの株数が買えるから良い」ということはわかっていても、損失が大きくなるのを見てしまうと、不安が拭えず投資を止めてしまうことがあるかもしれません。しかし、このように株価が最後には元に戻る場合は、そこで投資を止めてしまうことが損失を最も大きくする最悪なシナリオとなります。

値動きパターン2:下上

下図のように、サインカーブの逆位相となるような値動きの場合を想定します。

36回のそれぞれの購入時の株価とそれに応じた購入株数などをまとめると以下の表になります。

購入
回数
株価10,000円で
買える株数
投資額評価額損益
1100.0100.010,00010,0000
298.2101.820,00019,822▲ 178
396.5103.630,00029,474▲ 526
494.9105.440,00038,982▲ 1,018
593.4107.050,00048,387▲ 1,613
692.2108.560,00057,746▲ 2,254
791.2109.670,00067,126▲ 2,874
890.5110.580,00076,605▲ 3,395
990.1111.090,00086,263▲ 3,737
1090.0111.1100,00096,178▲ 3,822
1190.2110.8110,000106,425▲ 3,575
1290.8110.2120,000117,066▲ 2,934
1391.6109.1130,000128,146▲ 1,854
1492.7107.8140,000139,692▲ 308
1594.1106.3150,000151,7081,708
1695.6104.6160,000164,1724,172
1797.3102.8170,000177,0377,037
1899.0101.0180,000190,23410,234
19100.899.2190,000203,66813,668
20102.697.5200,000217,22817,228
21104.295.9210,000230,78620,786
22105.894.5220,000244,20424,204
23107.193.3230,000257,34227,342
24108.392.4240,000270,05830,058
25109.191.6250,000282,21932,219
26109.791.1260,000293,70333,703
27110.090.9270,000304,40834,408
28109.991.0280,000314,25434,254
29109.691.3290,000323,18833,188
30108.991.8300,000331,18831,188
31107.992.7310,000338,26228,262
32106.793.7320,000344,45424,454
33105.395.0330,000349,84219,842
34103.796.5340,000354,53414,534
35102.098.1350,000358,6708,670
36100.299.8360,000362,4182,418
最終値100.0360,000362,4181,760

最初の下落局面で損失が出ていますが、その後回復してくると利益が出はじめています。パターン1と同様に最終的には投資額36万円に対して約0.5%のプラスになっています。

積立時の損益を値動きのグラフに反映させると以下の図のようになります。

最初の株価沈み局面において、株価が100円まで戻らなくても93円程度の部分から運用状況はプラスになっています。これはつみたてによる大きな効果といえるでしょう。

最終的に元の株価まで下がってしまうとそれほど大きな利益は得られませんが、株価がピークの付近で売ることができれば大きな利益が得られるでしょう。

値動きパターン3:谷

下図のような、コサインカーブとなるような値動きの場合を想定します。

36回のそれぞれの購入時の株価とそれに応じた購入株数などをまとめると以下の表になります。

購入
回数
株価10,000円で
買える株数
投資額評価額損益
1110.090.910,00010,0000
2109.891.020,00019,985▲ 15
3109.491.430,00029,899▲ 101
4108.692.140,00039,688▲ 312
5107.593.050,00049,305▲ 695
6106.394.160,00058,714▲ 1,286
7104.895.570,00067,891▲ 2,109
8103.197.080,00076,827▲ 3,173
9101.498.690,00085,530▲ 4,470
1099.6100.4100,00094,024▲ 5,976
1197.8102.2110,000102,350▲ 7,650
1296.1104.0120,000110,568▲ 9,432
1394.5105.8130,000118,752▲ 11,248
1493.1107.4140,000126,987▲ 13,013
1592.0108.8150,000135,371▲ 14,629
1691.0109.9160,000144,004▲ 15,996
1790.4110.6170,000152,989▲ 17,011
1890.0111.1180,000162,423▲ 17,577
1990.0111.1190,000172,394▲ 17,606
2090.3110.7200,000182,973▲ 17,027
2190.9110.0210,000194,211▲ 15,789
2291.8108.9220,000206,134▲ 13,866
2393.0107.5230,000218,739▲ 11,261
2494.4105.9240,000231,995▲ 8,005
2596.0104.2250,000245,839▲ 4,161
2697.6102.4260,000260,176176
2799.4100.6270,000274,8874,887
28101.298.8280,000289,8279,827
29103.097.1290,000304,83414,834
30104.695.6300,000319,73219,732
31106.194.2310,000334,33724,337
32107.493.1320,000348,46928,469
33108.592.2330,000361,95431,954
34109.391.5340,000374,63234,632
35109.891.1350,000386,36536,365
36110.090.9360,000397,04137,041
最終値110.0360,000397,04737,047

前半の下落局面では損失が投資額の最大10%程度まで拡大していますが、その後の株価回復により最終的には10%程度の利益が生じています。

積立時の損益を値動きのグラフに反映させると以下の図のようになります。

最初に一括で購入した場合、株価が常に最初の値より低いので常に損失が生じている状態となりますが、積立による効果により株価が完全に回復しなくても、約97円の段階で損益はプラスに転換しています。

値動きパターン4:山

下図のような、コサインカーブの逆位相となるような値動きの場合を想定します。

36回のそれぞれの購入時の株価とそれに応じた購入株数などをまとめると以下の表になります。

購入
回数
株価10,000円で
買える株数
投資額評価額損益
190.0111.110,00010,0000
290.2110.920,00020,01818
390.6110.330,00030,123123
491.4109.440,00040,380380
592.5108.250,00050,843843
693.7106.760,00061,5521,552
795.2105.070,00072,5302,530
896.9103.280,00083,7803,780
998.6101.490,00095,2865,286
10100.499.6100,000107,0117,011
11102.297.9110,000118,9008,900
12103.996.3120,000130,88210,882
13105.594.8130,000142,87212,872
14106.993.6140,000154,77514,775
15108.092.6150,000166,49216,492
16109.091.8160,000177,92317,923
17109.691.2170,000188,97018,970
18110.090.9180,000199,54619,546
19110.090.9190,000209,57619,576
20109.791.2200,000219,00019,000
21109.191.7210,000227,77917,779
22108.292.5220,000235,89915,899
23107.093.5230,000243,36613,366
24105.694.7240,000250,21710,217
25104.096.1250,000256,5126,512
26102.497.7260,000262,3382,338
27100.699.4270,000267,807▲ 2,193
2898.8101.2280,000273,049▲ 6,951
2997.0103.0290,000278,218▲ 11,782
3095.4104.8300,000283,476▲ 16,524
3193.9106.5310,000288,998▲ 21,002
3292.6108.0320,000294,961▲ 25,039
3391.5109.3330,000301,539▲ 28,461
3490.7110.3340,000308,893▲ 31,107
3590.2110.9350,000317,172▲ 32,828
3690.0111.1360,000326,496▲ 33,504
最終値90.0360,000326,490▲ 33,510

パターン3と逆で、前半の状況局面では投資額の最大10%程度の利益が発生しているが、最終的には10%弱の損失が発生しています。

つみたて時の損益を値動きのグラフに反映させると以下の図のようになります。

一括購入した場合、常に最初の株価よりも高い値がついているため運用損益はプラスですが、つみたてによって株価が約101円の段階で損益がマイナスになっています。

まとめ

積立投資(時間分散)(ドルコスト平均法)の効果を検証するために三角関数を用いた4つの値動きのパターンについて検証してみました。

最初と最後の株価が同じになるこの4パターンにおいて、最終損益だけに着目すると次のような結果になります。

最終損益
パターン11,776
パターン21,760
パターン337,047
パターン4▲ 33,510

この4パターンが等しい確率で起こるとして期待値を考えると、一括購入した場合は損益が0円に対して、積立の場合は+1,768円となります。投資額36万円の割合から考えるとわずか約0.5%であり、計算時の四捨五入等の誤差も含んでいることを考慮するとそれほど大きな差はないと考えられます。以前の記事の結果からも一括購入とつみたての最終結果の比較において、期待値に大きな差は出ないことがわかっています。

積立の場合にとって最も都合の良いシナリオはパターン3のような下落した後に上昇する値動きです。このようなつみたての効果を最大限に活かすためには下落局面で怖がって辞めてしまわないことです。「下落局面こそその後の反発に備えたチャンス」と捉えることが大事になります。下落局面を乗り越えた先は元の株価まで回復しなくても、少しでも回復してくれれば運用損益がプラスになることが今回の図説でご理解いただけたでしょう。

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